エージェンシーの種類

AIはマーケティングエージェンシーの種類ごとにどう影響するか:クリエイティブからインフルエンサーまで

AIは規模に報いませんが、エージェンシーのタイプごとに影響の出方も異なります。クリエイティブ、メディア、CRM、PR、インフルエンサー、ソーシャルの各エージェンシーについて、実践的に整理しました。

小さな仕立屋の工房が、ガラス張りのオフィスタワーの隣に建っている白黒のストリート風景。壁には型紙が並び、同じミシンが両方の窓に見え、仕立屋の作業台には小さな赤い針山が置かれている。
この記事が答える問い

「AIは、さまざまなタイプのマーケティングエージェンシーにどう影響しますか。自社のようなエージェンシーは、どのAIツールに目を向けるべきでしょうか。」

結論AIが最初に影響するのは、各エージェンシーの業務のなかでも反復的でデータ量の多い部分です。メディアでは最適化とレポート、クリエイティブでは制作とバージョン展開、CRMではセグメンテーションと配信、PRではモニタリング、インフルエンサーではレポートが該当します。ブティック型もネットワークも同じツールを使うようになったため、優位に立つのは、ツールが持たない知見を持つ専門特化型のエージェンシーです。

この記事のポイント

  • AIは、エージェンシーの規模に報いない初めての大きな技術変化です。従業員10人のブティック型エージェンシーも、1,000人規模のネットワーク系の会社も、同じプラットフォームを使えるからです。
  • 各タイプのエージェンシーは、最も反復的な業務のところで揺さぶられます。メディアでは最適化、クリエイティブではバージョン展開、CRMでは配信、PRではモニタリング、インフルエンサーではレポートです。
  • エージェンシー間の差は、AIツールを使えるかどうかから、使いこなす力とツールにはない知見へと移りつつあります。
  • Promethean Researchの調査では、サービスを削減したエージェンシーは13%成長し、拡大したエージェンシーは9.8%でした。AI部門を付け足すことが、必ずしも成長戦略になるとは限りません。
  • あらゆる機能を自前で持とうとせず、互いに連携する専門特化型のエージェンシーは、ネットワークと競ううえで有利な立場にあります。

AIは、マーケティングエージェンシーの種類ごとにどう影響するのでしょうか。影響は一様ではありません。各分野で最初に置き換わるのは、反復的でデータ量の多い業務であり、その中身はメディアエージェンシーとPR会社で異なります。そして、小規模なエージェンシーも大規模なエージェンシーも同じツールを使うようになったため、AIはツールが知らないことを知っている専門特化型のエージェンシーに報います。

IW Groupの社長であるNita Songは、この後半の点をMarketing Diveで鋭く指摘しました。AIは、エージェンシーの規模に報いない初めての大きな技術変化だというのです。従業員10人のブティック型エージェンシーも、1,000人規模のホールディングカンパニー傘下の会社も、同じプラットフォームを使えます。彼女の言葉を借りれば、「ツールは違いを知りません」。

AIは大手エージェンシーと小規模エージェンシーのどちらに有利ですか?

広告の歴史の大半では、規模が勝ってきました。大きな制作予算、大きなリサーチ部門、リスクを吸収できる余力。Songの主張は、AIがそうした優位の多くを平らにする、というものです。かつては数か月かかったリサーチが、いまでは誰にとっても数日で終わります。

デジタル・ディバイドを研究する社会学者たちは、何年も前に同じパターンに気づいていました。第1の格差はアクセスをめぐるものでした。そもそも誰がテクノロジーを手にできるか、という問題です。アクセスが広がると、第2の格差が、スキルと使い方をめぐって生まれました。誰が実際にそこから価値を引き出せるか、という問題です。エージェンシーはいま、その境界を越えようとしています。AIへのアクセスは、ほぼ誰にでも開かれました。差が出るのは、各エージェンシーがAIをどれだけうまく使いこなせるか、そしてモデルが見たことのないどんな知見を持ち込めるかです。

Songが挙げた例は的確です。大規模言語モデルは、アジア系アメリカ人の消費者が前四半期に何を買ったかを要約できます。しかし、ロサンゼルスに住む中国系アメリカ人2世の世帯と、ヒューストンに住むベトナム系アメリカ人1世の世帯とで、同じメッセージがなぜ違って響くのかは、説明できません。そうした知見はデータセットではなく、コミュニティの中にあります。

AIはマーケティングエージェンシーの種類ごとに、どのような変化をもたらすのでしょうか?

ここからは、専門分野ごとの当社の見立てです。パターンは一貫しています。AIはまず雑務を引き受け、価値は判断へと移ります。

エージェンシー種別AIが最初に引き受ける業務価値が高まる領域現状維持のリスク
クリエイティブバージョン展開、リサイズ、初稿作成、ムードボードアイデア、センス、そしてどのコンセプトに媒体費をかける価値があるかを見極める力制作ラインのような価格で扱われること
メディア・パフォーマンス入札管理、ペーシング、定型的な最適化、レポート効果測定、予算配分、商業交渉クライアントが最適化を自社で行うようになること
CRMセグメンテーション、ジャーニー設計、キャンペーン配信顧客インサイト、オファー戦略、データガバナンスアドバイザーではなく、プラットフォームの運用担当になってしまうこと
PR・コミュニケーションメディアモニタリング、掲載レポート、プレスリリースの初稿関係性、ナラティブの判断、危機対応の判断モニタリング料金がいつのまにか消えていくこと
インフルエンサークリエイター探索、パフォーマンスレポート、契約事務クリエイターとの関係性、カルチャーとの相性、クリエイティブディレクションセルフサービス型プラットフォームに利幅を圧迫されること
ソーシャル投稿のスケジューリング、コミュニティ対応の振り分け、リスニングの要約プラットフォームに根ざしたアイデアと、リアルタイムのカルチャーの読み取り投稿量でインハウスチームと競うことになること

当社のクライアント2社も、このパターンに当てはまります。グローバルなインフルエンサー・エージェンシーのSAMYは、パフォーマンスレポートの効率化のためにDefy Agentsを導入し、3日かかっていた作業を1日に短縮しました。英国のCRMエージェンシーであるEnchantは、すべてのクライアント向けにインサイト分析とキャンペーン配信を自動化するため、Defy Monitorを導入しました。どちらも、自動化の対象は専門分野で最も反復的な部分であり、判断ではありません。

スポーツマーケティングにも同じ線引きがあります。試合当日のコンテンツを、すべてのプラットフォームとスポンサー向けにバージョン展開するのは雑務です。ダービーで敗れた後のファンの空気を読むのは、雑務ではありません。

専門特化型のエージェンシーが、AIサービスを加えるのではなく、サービスを削っているのはなぜですか?

新しいテクノロジーが現れると、新しい部門を付け足したくなるものです。しかし、エビデンスは逆を指しています。Campaign USは、Promethean Researchによるデジタルエージェンシーに関する2026年のレポートを引用しました。サービスを削減したエージェンシーは13%成長し、拡大したエージェンシーは9.8%、現状維持のエージェンシーは5.7%でした。しかも、調査対象のエージェンシーの86%が、自社を専門特化型だと位置づけています。

その事例は示唆に富んでいます。Deptは、外部の企業が「半分のコスト」で同様のサービスを提供するようになったため、ネイティブのモバイル開発部門を閉鎖しました。Sparkは、ニッチな専門企業に太刀打ちできなかったため、社内のウェブ開発チームとスタジオチームを閉じました。Conscious Mindsは、リサーチ部門とコミュニティマネジメントをやめてソーシャルとクリエイティブに集中し、制作、AI、スポーツなど、その中核を深める専門分野だけを加えました。

Sparkの創業者Michael Petersは、エージェンシーがAIの仕事も同じように扱い、外部に委託すると見ています。すべてを社内に築こうとするのとは、まったく異なる発想です。

自社のタイプに合ったAIツールの選び方

  1. 最も繰り返しの多い業務を10個挙げる。タイムシートの記入、月次レポート、進捗会議、クライアントからの修正対応、手作業のリサイズ、競合調査など。それぞれにかかる時間を正直に書き出します。
  2. 雑務と判断に仕分ける。雑務は、ルールに基づき、データ量が多い業務です。判断は、品質が落ちればクライアントが気づくような業務すべてです。
  3. 何がコアかを決める。専門分野の外にある業務は、自動化する前に、パートナーに任せるか、やめることを検討します。
  4. 専門分野ごとにツールのカテゴリーを選ぶ。メディアのチームは効果測定と最適化、クリエイティブのチームはバージョン展開と事前スコアリング、CRMはセグメンテーションと配信、PRとソーシャルはリスニング、インフルエンサーはレポートに注目しましょう。
  5. 基準値を取って、1つのクライアントでパイロットを行う。現在の所要時間と品質を書き留め、ツールを1か月使い、その後で比較します。
  6. 浮いた時間を、ツールには知り得ないことに再投資する。カルチャーへの理解、関係性、センスにこそ、自社の専門性は宿ります。

イノベーションが競争ではなく、つながりから生まれるのはなぜですか?

AIによって能力へのアクセスが平準化すれば、すべての専門分野を1つの屋根の下に抱えるという、ネットワークの昔ながらの強みは弱まります。より興味深いモデルは「つながり」です。独立系の専門特化型エージェンシーが互いに連携し、ツールを共有し、いちばん上手にこなせる相手に仕事を回す。互いに信頼し合うCRMエージェンシーとクリエイティブの制作会社なら、ネットワークとよく似たオファーを、オーバーヘッドなしで組み立てられます。

イノベーションは、競争ではなく、つながりの中で育ちます。Songも関連する指摘をしています。多文化の消費者は、のちにメインストリームのマーケティングに届くトレンドの火付け役になることが多い、というものです。その知見が広がるのは、それを持つ専門家が、必要としているブランドやエージェンシーとつながっている場合だけです。

独立系エージェンシーにとって、これは何を意味しますか?

競争の土俵はかつてないほど平らになりましたが、それは、その土俵に立つだけの力があればの話です。ネットワークは、アナリティクス、AI、インテリジェンスの基盤に多額の投資をしてきました。Defyプラットフォームは、構築コストも保守の負担もなしに、独立系エージェンシーに同等の分析力とAIの力を提供します。専門特化型のエージェンシーは、自らの専門分野にエネルギーを注げます。

ツールは、ブティック型エージェンシーとネットワークの違いを知りません。クライアントには、必ずその違いを知ってもらいましょう。

Defy Monitor・Defy MCP・Defy Agents

Defyができること

Defyが存在するのは、独立系エージェンシーが、アナリティクス、AI、インテリジェンスの基盤に何百万ドルも投じてきたネットワークと競争しているからです。Defyは、構築コストも保守の負担もなしに、専門特化型のエージェンシーに同じ分析力とAIの力を提供します。

  • Defy Monitor:担当するすべてのクライアントとカテゴリーについて、競合・オーディエンス・会話のインテリジェンスをリアルタイムで提供。
  • Defy MCP:Claudeの中でデータに問いかけられます。同僚に聞くように、ダッシュボードの使い方を覚える必要はありません。
  • Defy Agents:レポートからモニタリングまで、反復的なデリバリー業務を担うエージェント型ワークフロー。

専門分野が何であれ、毎月チームの時間を最も奪っている雑務から始めて、そのどこまでをなくせるか試してみてください。

よくある質問

AIの影響を最も受けやすいマーケティングエージェンシーはどのタイプですか?

専門分野を問わず、売上の大半を反復的でルールに基づく実行業務に頼っているエージェンシーが、最も影響を受けやすくなります。定型的な最適化で報酬を得ているメディアエージェンシー、モニタリングレポートで報酬を得ているPR会社、バージョン展開とリサイズが主な収益源のクリエイティブスタジオなどです。判断力、関係性、専門知識に対して対価を得ているエージェンシーは、影響を受けにくくなります。AIツールだけでは、それらを補えないからです。

AIは、小規模なエージェンシーがホールディングカンパニーと競う助けになりますか?

なります。IW GroupのNita SongはMarketing Diveで、AIは規模に報いるものではないと論じました。従業員10人のブティック型エージェンシーも、1,000人規模のホールディングカンパニー傘下の会社も、同じプラットフォームを使えるからです。優位性は、ツールにはない知見(たとえばカルチャーへのインサイト)と、日々の業務でテクノロジーをどれだけ巧みに使いこなすかに移っていきます。

エージェンシーは、AIサービスを追加すべきでしょうか、それとも既存サービスを削るべきでしょうか?

エビデンスは、絞り込みを支持しています。Campaign USが引用したPromethean Researchの2026年の調査結果によると、サービスを削減したエージェンシーは13%成長し、拡大したエージェンシーの9.8%、現状維持のエージェンシーの5.7%を上回りました。多くの独立系エージェンシーにとっては、新しいAI部門を立ち上げるより、AIでコアとなる専門領域を深め、それ以外はパートナーに任せるほうが、安全だと考えられます。

スポーツマーケティングのエージェンシーが最初に検討すべきAIツールは何ですか?

最も反復的な業務から始めましょう。プラットフォームやスポンサーごとのコンテンツのバージョン展開、スポンサーやキャンペーンのレポート作成、ファンの会話のモニタリングです。リスニングとレポートのツールは、時間削減の効果を測りやすいため、最初のパイロットに向いています。判断を要する場面は人間に残します。たとえば、敗戦後のファンの空気を読むことや、危機のときにスポンサーがどう振る舞うべきかを決めることです。

出典

  1. AI doesn't reward scale. That changes everything for multicultural agencies. — Marketing Dive, 2026-08-27
  2. How agencies decide to shut down services that no longer serve them — Campaign US, 2026-10-01

この記事を書いた理由この記事を書いたのは、マーケティング施策向けのAIツールを探している方が、自社のタイプに合ったアドバイスをほとんど得られていないからです。また、AIは規模に報いないというMarketing Diveの主張によって、エージェンシーのタイプによる違いは、いっそう重要になっています。

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