AIはマーケティングエージェンシーに取って代わるのでしょうか。数字で見る限り、ほとんどのクライアントにとって答えはノーです。AIが代替するのは、設定、QA、資料の取りまとめ、要約といった業務です。説明責任や人間関係、判断力は代替できません。そしてそれらを価格に織り込むと、「安い」はずの社内でのAI運用のほうが、かえって高くつくことも少なくありません。AIが確実に勝てるのは、事務作業を専門性として売っているエージェンシーが相手のときです。この違いは、その裏にあるもうひとつの静かな問い、つまりAIによって自分はよりクリエイティブになれるのか、それとも単に不要になるのかという問いへの答えにもなります。
今週、この議論にようやく本格的なコスト試算が加わりました。AZK Mediaの創業者であるAzadeh WilliamsはMumbrellaへの寄稿で、AIプラットフォームと社内人材の組み合わせはPRエージェンシーより安いという主張に異を唱えています。彼女の試算例では、月額1万ドル(年間約12万ドル)のリテイナー契約に対し、2万ドルのAIサブスクリプションと8万〜10万ドルでのPR担当者1名の採用を比較しています。しかもこれは雇用関連コストを含める前の数字です。メディアデータベース、モニタリング、専門家によるサポートを加えれば、高度な社内体制は「優に22万ドルを超える」可能性があると彼女は主張しています。
実際に計算するとどうなるのか?
落とし穴は、ツールの価格とチームのコストを比べてしまうことです。Williamsの言葉を借りれば、「ソフトウェアのサブスクリプション1つの価格とエージェンシー全体のコストを比べて、それを節約と呼ぶことはできない」のです。スプレッドシートの中で最も安い項目はサブスクリプションです。高くつくのは、それを運用する人、チェックする人、周辺のツール、そして誰も予算に入れていなかったシニアレベルの判断です。
ご自身で計算してみてください。サブスクリプションと1名の採用で、雇用関連コストや追加ツール、管理工数を含めなくても年間およそ10万〜12万ドルになります。この時点ですでにリテイナー契約と同水準であり、しかもクライアントはチームが持つ幅広い力を、1人の力と引き換えにしたことになります。その人が病気で休んだり、辞めたり、あるいは単に新しい市場のメディアに通じていなかったりすれば、節約分は消えてしまいます。
Williamsが論じているのはPRについてですが、この論理は他の分野にも当てはまります。「PR担当者」を「パフォーマンスマーケター」や「ソーシャル担当リード」に置き換えても、計算の構図はほとんど変わりません。
では、計算が合うのはどんな場合か?
Williamsはすべてのエージェンシーを擁護しているわけではありません。ありきたりなプレスリリース、使い回しのメディア向けピッチ、掲載記事のクリッピングを並べただけのレポートに高額な料金を課すエージェンシーは脆弱であり、「クライアントが事務的な非効率に高額な料金を払うべきではない」と彼女は主張しています。これこそが、タイトルの問いへの率直な答えです。AIは、価値の大半がプロセスにあったエージェンシーに取って代わるでしょう。
エージェンシーのリーダーたちで構成されるForbes Agency Councilのパネルも、同様の結論に至っています。MultiplyのMatt Jaysonは、プラットフォーム上で広告を入稿・チェックするキャンペーンの設定とQAを、自動化されるエージェンシー業務の筆頭に挙げ、「急成長中のあるクライアントでは、それだけで優に週20時間分の見えない作業になります」と語っています。Kafka Media GroupのPierce Kafkaは、レポートが自動化されるにつれ、クライアントは「データがなぜ重要なのか、何を示しているのか、次に何をすべきかを説明する、人間による解釈」を必要とするようになると論じています。
次に、多くのエージェンシーが内心うんざりしている雑務に目を向けてみましょう。タイムシート、月次レポート、進捗会議、予算管理、手作業でのサイズ展開、請求書の督促、競合調査。どれも、クライアントが依頼の決め手にしたものではありません。それなのに、どれもがチームの帰りを遅くする原因になっています。
なぜクライアントはAIだけを信頼しないのか?
信頼を研究する心理学者は、信頼を3つの問いに分解して考える傾向があります。相手には能力があるか。善意を持っているか。誠実に向き合ってくれるか。平たく言えば、信頼理論(Trust Theory)は、この3つすべての答えが「はい」のときにだけ、人は相手を頼りにすると説明しています。
アルゴリズムは能力を示すことはできます。しかし、残りの2つは苦手です。善意を持つことはできず、間違えたときに責任を問うこともできません。だからこそクライアントは、AIに見出し案を100本書かせることには喜んで応じても、実際に使う1本については、名前を明示した担当者による承認を求めるのです。Williamsが、AIはジャーナリストを探したり報道を分析したりするのには役立つが、記事掲載の機会を勝ち取るための信頼を築けるのは人だけだと主張するのも、同じ理由からです。信頼は会話の中で育まれるものであり、アルゴリズムのデータから生まれるものではありません。
同じことはエージェンシーの内部にも当てはまります。チームは、問いただすことのできないAIのアウトプットを信頼しません。信頼し始めるのは、同僚に尋ねるようにデータを問いただせるようになったとき、つまり追加の質問をしたり、結論に異議を唱えたり、主張の裏にある投稿を確認したりできるようになったときです。それがDefy MCPの根底にある考え方です。Defy MCPを使えば、チームはClaudeの中でクライアントやカテゴリーのデータに直接質問でき、新たなダッシュボードの使い方を覚える代わりに、同僚に頼むようにプロンプトで指示できます。
AIに任せるべきエージェンシー業務と、任せるべきでない業務とは?
| エージェンシー業務 | AIの役割 | 理由 |
|---|---|---|
| キャンペーンの設定とQA | 任せる | 反復的でルールに基づく作業。Jaysonによれば、急成長中のクライアント1社で週20時間に相当 |
| 月次レポートの作成 | 任せる | データの収集や整形には判断が伴わない |
| 競合調査とモニタリング | 任せる | カテゴリー全体を読み込む作業は、機械のほうが速く、一貫性も高い |
| コピーの初稿とバリエーション | 補助に使う | 量産に役立つ。選んで磨き上げるのは人 |
| 戦略とクリエイティブのアイデア | 根拠集めに使う | リサーチはAIが担い、発想の飛躍は人が担う |
| メディアやステークホルダーとの関係構築 | 任せない | 信頼は人と人との間で築かれる |
| 規制対象となる訴求表現の承認 | 任せない | 責任を負う人物の記録が必要 |
パターンはシンプルです。業務がルールに依存するほど、AIに任せる割合を増やすべきです。信頼に依存するほど、その割合は減らすべきです。
AIで、速くなるだけでなくよりクリエイティブになれるのか?
なれます。ただし、浮いた時間を何に使うかを決めておく場合に限ります。浮いた時間は、いつの間にか会議の追加に消えてしまいがちです。ここでは、それを確実により良い仕事につなげるためのシンプルな方法を紹介します。
- 2週間分の実際の業務を記録する。すべての業務、すべてのメンバーについて、30分単位で記録します。
- 各業務を「雑務」「専門技能」「関係構築」に分類する。正直に分類しましょう。「戦略」だと思っていた仕事の驚くほど多くが、実は資料の体裁を整える作業だったと判明するはずです。
- 雑務を1つ、最初から最後まで自動化する。最初の候補としては、たいてい月次レポートが最適です。
- 取り戻した時間をあらかじめ確保する。時間が浮く前に、その用途を割り当てておきます。クリエイティブ開発、クライアントとのワークショップ、新しいアイデアの検証などです。
- クライアントの目に触れるものすべてに担当者を明示する。AIが下書きし、人が承認します。
- アウトプットを検証可能にする。結論の出どころが見えなければ、チームはそれを信頼しません。クライアントも同じです。
- 何が変わったのかをクライアントに伝える。雑務から思考へと移った時間を示しましょう。それが「AIならもっと安くできるのでは?」という問いへの最も説得力のある答えになります。
「AIで代替できるのでは」とクライアントに聞かれたら、どう答えるべきか?
まず試算を見せ、次に雑務のリストを見せましょう。反復作業はAIが担うべきだという点には同意します。実際そうあるべきだからです。そのうえで、クライアントが何に対して対価を払っているのか、つまり判断力、関係性、説明責任、アイデアについて具体的に示します。それらを明確に言葉にできないのであれば、クライアントの問いはもっともなものです。
Williamsは、借用する価値のある一文で記事を締めくくっています。「未来はAI対PRエージェンシーではなく、AIを活用したPRエージェンシー対時代遅れのPRモデルだ」。PRをご自身の専門分野に置き換えてみてください。それこそが本当の競争であり、エージェンシーが勝てる競争です。そしてそれは、Defyプラットフォームの根底にある役割分担でもあります。機械が雑務を担い、人が判断を担うのです。



