AIトランスフォーメーション

エージェンシーのAI導入:自動化の前に実際のワークフローを文書化する

悪いプロセスにAIを乗せても、速い悪いプロセスができるだけです。エージェンシーが何かを自動化する前に、仕事が実際にどう流れているかを観察し、直す価値のあるボトルネックを一つ見つけましょう。

ロボット掃除機がインクや細断した紙をスタジオの床いっぱいに輪を描いて塗り広げ、そのごみが、小さな赤い四角のテープで示された戸口に積み上がっている様子を真上から写したモノクロ写真。
この記事が答える問い

「エージェンシーの既存のワークフローにAIツールを組み込む際、状況を悪化させないためにはどうすればよいか」

結論ツールではなく、仕事から始めましょう。実際にその仕事をしている人たちのそばに座り、SOPに書かれていることではなく、実際にどう流れているかを描き出し、ボトルネックを一つに絞り込みます。ブリーフ、制作、承認、引き継ぎ、意思決定のいずれかです。名指しできないなら、まだ何も自動化しないでください。壊れたプロセスにAIを当てはめても、速く壊れたプロセスができるだけです。

この記事のポイント

  • 悪いプロセスにAIを適用すると、速い悪いプロセスになります。自動化は、混乱も含めて、触れたものすべてを増幅するからです。
  • SOPは仕事がどう行われるべきかを示し、ワークフローは実際にどう行われているかを示します。この二つのギャップに、ボトルネックが潜んでいます。
  • エージェンシーのボトルネックは、たいてい五つの場所のいずれかにあります。ブリーフ、制作、承認、引き継ぎ、意思決定です。
  • ボトルネックを名指しできないなら、何も自動化しないでください。まず人に関わる部分を直し、そのうえで残った反復的なステップでAIを試験導入します。
  • Digidayによると、エージェンシーは既存の契約に条項を一つずつ継ぎ足す形でAIを組み込んでいます。クライアントがエージェンシーのAIツールに近づくほど、文書化され、チェックされたプロセスの重要性が増します。

エージェンシーの既存のワークフローにAIツールをどう組み込むか。ツールから始めてはいけません。まず仕事が実際にどう進んでいるかを観察し、詰まっている場所を一つ見つけ、AIがそこに必要かどうかはその後に決めます。悪いプロセスにAIを適用すれば、速い悪いプロセスが手に入るだけです。

これは、今週シンガポールで開かれたAI導入セッションに登壇したあるエージェンシー創業者が語った、耳の痛い教訓です。彼は約20人規模の自社を「AIネイティブ」にしようと18か月を費やし、やり直したいことを率直に語りました。最も印象的だったのが、次のたとえです。散らかった家にロボット掃除機を置いても、何も片づかない。散らかりを床の上で引きずり回すだけだ、と。

タイミングは意味深です。Digidayによると、エージェンシーは既存の基本サービス契約(MSA)を書き換えるのではなく、条項を一つずつ継ぎ足してAIを組み込んでいます。きっかけは、クライアントがエージェンシー独自のAIツールの利用枠を求める場合、AIに関する文言を求める場合、あるいはクライアント案件に新しいAIツールが登場する場合です。Mile MarkerのCEOはDigidayにこう語りました。「今や私たちは、それを既存のMSAに組み込むだけという段階に来ています」。契約は継ぎ足されます。ワークフローもです。継ぎ足しの上に継ぎ足しを重ねることが、エージェンシーが混沌を自動化してしまう道筋なのです。

悪いプロセスにAIを適用すると、なぜ速い悪いプロセスになるのか?

自動化は、触れたものすべてを増幅するからです。ブリーフが中途半端な状態で届けば、AIのドラフトツールは中途半端なコンセプトをより速く生み出します。承認が、予定の詰まった一人のクライアントサービスディレクターに集中しているなら、制作を速めても、彼女の部屋の外に並ぶ行列が長くなるだけです。

自社のプロセスが散らかっていることを、多くのエージェンシーは知っています。見くびっているのは、その散らかりのうち、実は全体を支えている部分がどれほどあるかです。シンガポールの創業者は、自社を自分の散らかった自宅にたとえました。訪問者には混沌でも、本人は財布がどこにあるか正確に知っている。エージェンシーも同じように動いています。ピッチが実際にどうまとまるのか、あるクライアントのレポートがなぜいつも二度目のチェックを要するのか。その答えは、人々の頭の中にあります。

その知識は、AIツールには見えません。新入社員にも見えないことが少なくありません。彼の主張は、これ以上ライセンスを買い足す前に、まずその知識を、AIにも新人にもアクセスできる形にすることが最初の仕事だ、というものでした。

SOPと実際のワークフローの違いは?

SOPは、仕事がこう行われることになっている、という姿を記述したものです。ワークフローは、実際にどう行われているかです。創業者のアドバイスは率直でした。現場の専門家の隣に座り、仕事をするのを見ること。SOPと実際にやっていることのギャップに、ボトルネックが潜んでいます。

図が示すとおり、SOPは整ったチェックリストです。実際のワークフローは自分自身に戻ってループし、Slackやメールへと回り道し、誰かを待ち、すべてが滞留する一点があります。赤で示したその一点こそが、自動化が報われる唯一の場所です。

どのエージェンシーにも、それぞれのバージョンがあります。プロジェクト管理ツールには、クリエイティブレビューは火曜日に行うと書かれていますが、実際にはECD(エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター)がピッチの合間にスマートフォンでレビューし、チームは木曜日に遅くまで働いています。メディアのSOPには、月次レポートは「データを取得し、資料を作り、送る」と書かれています。実際には、アナリストが、どうしても合わない各プラットフォームの数字のすり合わせに半日を費やしています。

「ワークフローとSOP」と題した図。左に整ったSOPのチェックリスト、右に実際の散らかったワークフローが描かれ、ボトルネックが赤い四角で示されている。
紙の上のSOPと、実際のワークフロー。ボトルネックを赤で示しています。2026年10月にシンガポールで開かれたAI導入セッションで共有されたフレームワーク。

エージェンシーのボトルネックは、たいていどこに潜んでいる?

講演では、よくある容疑者として五つが挙げられました。制作、承認、ブリーフ、引き継ぎ、意思決定です。それに添えられたルールは、どれが自社のボトルネックか特定できないなら、何も自動化しないこと。エージェンシーの種類別に、それぞれがどう現れやすいかを示します。

ボトルネック現れ方最初に直すことその後にAIが役立つ場面
ブリーフクリエイティブ系:課題について合意していなかったために、コンセプトが却下されるクライアントが承認する短いブリーフのテンプレートカテゴリーと競合の文脈の事前入力
制作ソーシャル・パフォーマンス系のチーム:同じアセットを、配信面ごとに手作業でリサイズしている合意済みのフォーマットと命名規則リサイズとバージョン展開の自動化
承認PR系:声明が、シニアの承認一人を待って止まっている代理者の指名と承認期限書き直しではなく、チェックするだけの状態で届くドラフト
引き継ぎメディア・CRM系:ストラテジー、プランニング、アクティベーションの間で文脈が失われる意思決定を一元的に記録した共有の記録仕事とともに受け渡される要約
意思決定インフルエンサー系:クリエイターの候補リストの検討が何週間も続く明確な基準と、一人の意思決定者その意思決定者のための、より速いエビデンス収集

順序に注目してください。どの行でも、直すのは人が先、技術が後です。不明確なブリーフや不在の意思決定者を、AIが解決することはまずありません。そのコストをより速く可視化するだけです。

なぜこれは繰り返されるのか?

システム理論が、わかりやすい説明を与えてくれます。システムのアウトプットは、個々の部品がどれだけ優れているかではなく、部品同士がどうつながっているかで決まります。あるステップを速めても、そのステップが制約だった場合にしか、全体は改善しません。制約が別の場所にあるなら、その手前により大きな山を築いただけです。

エージェンシーは、人、ブリーフ、クライアント、ツール、締め切りからなるシステムです。その片隅に強力なAIツールを投入するのは、渋滞にはまった車に、より速いエンジンを積むようなものです。ボンネットの中は立派でも、会議に着くのは少しも早くなりません。

Digidayが伝える契約の継ぎ足しは、商取引のレベルで起きている同じパターンです。関係の成り立ちを設計し直すのではなく、新しいツールが登場するたびに条項を一つ加える。理解できる対応です。同時に、賭け金も引き上げます。クライアントが独自のAIツールのアカウントを求め始めれば、その下にあるプロセスが見えてしまいます。クライアントがログインしている状況では、速い悪いプロセスを隠すのはずっと難しくなります。

自動化の前に、ワークフローをどう文書化する?

  1. 困っているワークフローを一つ選ぶ。月次のクライアントレポート、競合監査、ピッチ資料など、頻繁に発生して負担の大きいものを選びます。「すべて」ではなく。
  2. 実際にやっている人を見つける。SOPを書いた部門長ではなく、毎週その仕事をしているアカウントエグゼクティブやアナリストです。
  3. 一回のサイクルを通して隣に座る。トリガーから納品まで、仕事を見届けます。使うツール、メッセージ、待ち時間、回避策をすべて書き留めます。「何を」よりも「なぜ」を多く尋ねましょう。
  4. SOPの隣に実際の流れを描く。図のように、二つを並べて、違いのある箇所すべてに印を付けます。
  5. タスクだけでなく、待ち時間を計る。エージェンシーの仕事は、素早く進んだかと思うと、何日も止まっていることがよくあります。最も長い待ち時間が、ボトルネックを指し示しているのがふつうです。
  6. ボトルネックを一言で名指しする。ブリーフ、制作、承認、引き継ぎ、意思決定。チームの意見が一致しないなら、観察を続けます。まだ自動化はしません。
  7. 人の部分を直してから、AIの部分を試す。まずプロセスを変え、その後、まだ反復的なステップで自動化を試験導入し、結果を従来のやり方と比較します。

結果は、人にもAIにも読める場所に書き留めておきましょう。文書化されたワークフローは、AIシステムが実際に使える最初の資産であり、新入社員が最初に感謝するものでもあります。

エージェンシーは、何から自動化すべき?

ボトルネックがはっきりしたら、最初の候補として最適なのは、たいてい、誰も広告業界に入ってまでやりたいとは思わなかった雑務です。月次レポート、競合監査、手作業のリサイズ、進捗報告など。反復的で、いまなら説明できるルールに従っていて、判断はその内側ではなく周辺にあります。

それが、Defy Agentsが対象とする領域です。レポーティング、モニタリング、リサイズといった反復的なデリバリーを引き受けるエージェント型ワークフローで、人は勝てる仕事に集中できます。グローバルなインフルエンサーエージェンシーのSAMYは、パフォーマンスレポートの効率化にDefy Agentsを採用し、3日かかっていた作業を1日に短縮しました。レポーティングは、ワークフローを理解してしまえば、記述し、測定し、任せられる、まさにそういう仕事です。

エージェント、モニタリング、データアクセスがどう組み合わさるかを知りたい方は、Defyプラットフォームに全体像があります。ただし、マッピングが先です。ツールは、最初ではなく最後に決めることです。

Defy Monitor・Defy MCP・Defy Agents

Defyができること

Defyは、AIに判断ではなく雑務を任せたいエージェンシーのために作られています。

  • Defy Agentsは、レポーティング、モニタリング、リサイズといった反復的なデリバリーのエージェント型ワークフローを実行します。SAMYはパフォーマンスレポートを3日から1日に短縮しました。
  • Defy Monitorは、競合、オーディエンス、会話に関するインテリジェンスをリアルタイムで提供するため、競合監査は手作業ではなくなります。
  • Defy MCPを使えば、チームはClaudeの中でそのデータに問いかけられます。同僚に頼むようにプロンプトを送るだけで、覚えるダッシュボードはありません。

まずは、マッピングしたワークフローとそのボトルネックを一つ用意してください。そのうえで、その反復的なステップのうちどれをエージェントがチームから引き取れるか、私たちにご相談ください。

よくある質問

AIを導入する前に、SOPを書くべき?

SOPは役に立ちますが、それだけでは足りません。SOPが記録するのは仕事がどう行われるべきかであり、AIが知る必要があるのは、実際にどう行われているかです。仕事をしている人を観察し、待ち時間や回避策も含めて実際のワークフローを文書化し、チームとAIツールの両方が読める場所に保管してください。そのうえで、SOPを現実に合うよう更新します。

ボトルネックが特定できない場合は?

その場合は、まだ自動化しないでください。観察を続け、ステップ間の待ち時間を計測し、作業をしている人に、どこで詰まるのかを尋ねましょう。ボトルネックは、タスクではなく、人や意思決定であることがよくあります。たとえば、多忙すぎる承認者や、あいまいなブリーフです。制約がどこにあるかを知る前に自動化すると、たいていは滞留が別の場所に、より速く移動するだけです。

エージェンシーのワークフローを一つマッピングするのに、どれくらいかかる?

その仕事の一連のサイクルを、最初から最後まで少なくとも一回見届けられるだけの時間です。週次レポートなら一週間、月次レポートやピッチなら一か月か、実際に動いている案件一つ分でしょう。目的は完璧な図を描くことではなく、時間がどこで消え、誰を待って仕事が止まっているのかを、正直に把握することです。

クライアント契約のAI条項は、自動化の進め方を変える?

賭け金を引き上げます。Digidayによると、エージェンシーは、クライアントが独自のAIツールのアカウントを求めるとき、AIに関する文言を求めるとき、あるいはクライアント案件で新しいAIツールを使うときに、既存の基本サービス契約にAI条項を追加しています。エージェンシーのAIワークフローをクライアントが見たり使ったりできるようになるなら、その土台にあるプロセスは、健全で、文書化され、人がチェックしていなければなりません。

出典

  1. AI reshapes agency economics, but their contracts are still scrambling to catch up — Digiday, 2026-09-10

この記事を書いた理由本記事を書いたのは、「すでにあるワークフローにAIをどう組み込むか」が多くのエージェンシーの出発点であり、今週シンガポールで開かれたAI導入セッションでの率直な報告が、ツールから始めるとなぜうまくいかないのかを示していたからです。

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